マクロ環境に取り残されない!PEST分析というフレームワーク

ビジネスフレームワークの存在を知る

まずあなたが初めてマーケティングの分析や経営戦略を立てるとなったとき、ぜひとも知っておいていただきたいツール、ビジネスフレームワークについて説明したいと思います。

ビジネスフレームワークというのは、情報の収集や整理にとどまらず、得た情報から分析を行い、経営戦略やマーケティングの施策といった具体的なアクションを考えるためのツールです。

マーケティングに関する主なビジネスフレームワークをいくつか挙げると、4C分析、3C分析、5F分析、SWOT分析、PPM分析、といったものがあります。これらを実務の現場で繰り返し使いながら「どういう視点が必要か」「どう活かせば良いか」「どういったポイントを深めるべきか」といった様々な要素を分析し、売り上げに繋げられるよう考えます。
ビジネスフレームワークについて、おおよその説明ができたところで、今回のテーマであるPEST分析について解説していきたいと思います。

マクロ環境を知る、PEST分析

PEST分析のPESTとは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の、マクロ環境における4つの要因をその頭文字を取って表したものです。

業界分析を行う上で、業界を取り巻く環境について便宜的に以下のような言葉に置き換えて考えることがあります。

●ミクロ環境:業界周辺の環境(需要状況、顧客動向、競合動向、製品関連技術、原材料市場と供給業者の動向、協力業者、株主、その他の利害関係者の動向、といった内部的要因)
●マクロ環境:業界の外側の環境(自然環境、社会環境、文化、人口動態、政治、経済、産業構造、金融、労働市場、先端技術、といった外部的要因)

PEST分析は特にマクロ環境、つまり業界の外側にある自分たちではどうにもならない要因について分析し、今後の行動指針を考えるツールです。PEST分析を用いるのは、市場への新規参入を検討する際や海外戦略の策定といったことが主な活用タイミングと考えられます。企業を取り巻くマクロ環境を詳しく的確に把握し、今後どのような影響を及ぼすのか予測します。自社の製品・サービスをその時代に合ったものとして供給することは、未来において業界で生き残ることにも繋がるのです。

では、これからPESTそれぞれの要因が自社の戦略へもたらす影響について考えていきたいと思います。

Politics(政治的要因)

政治的要因とは法改正・凡例・規制緩和、税制の変化、政治動向、政治思想の潮流・変化、補助金制度・交付金制度・特区制度の変化、といった行政レベルでの変化を表します。
政治的要因は、一企業が頑張ってどうにかなるというものではありません。しかしこういった政治的要因は市場競争の前提とも言える「市場競争のルール」そのものに多大な影響を与えてしまうものであるため、何も対策を取らないという訳にはいきません。PEST分析を行い、あらゆる思考を巡らせて機会や課題の仮説を立てるということは可能であり、また必要なことなのです。

<政治的要因が影響を及ぼす例>

●食品業界において
2015年より前は、食品の機能性(効き目)を表示できるのは「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」だけでしたが、規制緩和により「機能性表示食品」も加えられました。
国が個別に審査し許可することが必要であった「特定保健用食品(トクホ)」や国が定める規格基準に適合した「栄養機能食品」とは異なり、「機能性表示食品」は事業者の責任において事前に届け出をするだけで機能性の表示が可能になったため、現在では多くの機能性表示食品を目にするようになりました。

●人材派遣業界において
2015年、労働者派遣法の改正によって対象者以外の日雇い派遣が原則禁止となり、短期間での派遣就業が困難になりました。そもそも労働者の生活を安定させるための措置であったはずが、結果的に働き口を失って困る人が増えたという事実もあります。

政治的要因は、全ての企業に等しく影響を及ぼすことになります。しかし、いかに早く分析し経営戦略を立てられるかで、ある企業には機会にもなり、またある企業には脅威にもなりうるのです。

Economy(経済的要因)

経済的要因では、「需要と供給のバランスが価格に影響を与える」とする経済理論『価格均衡理論』に従い「売上」や「投資・コスト」に対して大きな影響を与えます。このため消費者の購買意欲や支出動向のみならず、仕入れコストや製造コストまた輸送コストや人件費といった経済の動向についても目を光らせる必要があります。経済的要因を見極めて、適切なタイミングで戦略を立てることが重要なのです。

<経済的要因が影響を及ぼす例>

●食品業界において
為替変動が起こった場合、海外からの原材料の仕入コストもまた変動します。国内での労働力不足のため海外での労働力に頼るところが大きければ、人件費への影響も考えられます。低価格を強みとしている企業にとって、これらの変動はコスト面で無視できない経済的要因となりえます。

●自動車業界において
自動車業界においても為替変動により、海外の労働力に対する人件費の変動が考えられます。賃金の動向や株価の動向などは、自動車業界の売り上げを大きく左右するでしょう。

Society(社会的要因)

社会的要因では、人口の増減、生活者のライフスタイル、文化や流行、犯罪や地球環境などの社会問題、社会インフラ、世論・教育・宗教といった生活者の意識や価値観といった要因の変化について考えます。私たちにとって最も身近な要素を含む項目です。
社会的要因は、生活者の需要構造へ大きく影響を及ぼすので、自社のブランディングやマーケティングへも同様に影響するため、分析が必要なのです。
流行に乗り続けることも大事ですが、流行そのものを作り出すという方向性も打ちだせるかもしれません。

<社会的要因が影響を及ぼす例>

●食品業界において
社会的要因の主だった事例は「単身世帯の増加」です。未婚者の増加、離婚者の増加、単身高齢者の増加、といった要因によって単身世帯が急増しているのです。こういった変化に合わせて食品業界も「個分け包装」や「容量を少なくした製品」で対応しています。

●時間外労働への価値観の変化
近年にかけて次々と明るみになった大手企業の過労死事件、ニュースで見聞きする機会が増えました。この社会事件によって、従来の時間外労働は止むを得ない・美徳である、といったイメージは、時間外労働は悪であるといったイメージになり、世間の価値観は一変してしまいました。こういった変化は、企業だけでなく消費へも影響を与えます。

Technology(技術的要因)

技術的要因では、商品開発技術や生産技術、IT・デジタル技術あるいはマーケティング技術の変化などを指します。
技術的要因が重要な理由として、競争ルールやKSF(重要成功要因)に大きな影響を及ぼすことがあるからだと考えられます。

<技術的要因が影響を及ぼす例>

●自動車業界においてディーゼルエンジン、電気自動車やハイブリッド車など、排気量を抑えるための次世代自動車へのシフトが進んでいます。次世代自動車というと、その動力はエンジンからモーターへ切り替わります。IT・デジタルテクノロジーの進化はますます進化を遂げ、そのうち皆がスマートフォンのアプリから遠隔操作で車体を運転したり管理したりということが当たり前になっているかもしれません。
このことからも理解できるように、多くのマーケティング担当者だけでなく、私たち生活者にとっても最もインパクトのあった「技術的要因」といったらIT・デジタル技術の進化といえるのではないでしょうか。

●マーケティング手法の変化
また、ブランディング・マーケティングの手法はこのように変化しました。

◆IT技術を使ってビジネス展開する企業、GOOGLE、APPLE、FACEBOOK、AMAZONといったプラットフォームと呼ばれる大企業の登場により、安価で広告を出したり・ABテストによりCV数を増やしたりすることが可能になった
◆マーケティングのデジタル化によってリアルタイムで生活者の動きがわかり、いち早くPDCA改善を行えるようになった
◆スマートフォンが広く浸透したことで、生活者は常にブランドと接点を持つことが可能になった

PEST分析の手順と注意点

PEST分析を行うにあたり、まずは政治的、経済的、社会的、技術的な4つの要因について「今どういう状況にあるのか」「何が変わるのか・または変わらないのか」といった項目について書き出していきます。次にこの項目について、過去・現在・未来の形式に置き換えて考えていきます。未来については中長期的な期間・概ね3〜5年といったマクロトレンドについて考えてみましょう。

将来の予測というのは不確実で困難なことです。しかし過去・現在・未来におけるマクロトレンドについて積極的に仮説を立て、中長期的な戦略を立てることは、業界に及ぼす影響を考える上で有効と思われます。
マクロ環境で取り残されないでいられるには「何が変わったのか、今後変わっていくのか」また「何か変わっていないか、今後も変わらなさそうか」という視点で考えること、つまりマクロ環境における一時的なトレンドと中長期的なトレンドを見極めていくことが重要です。
ここで、一時的なトレンドと中長期的なトレンドを、大規模な震災によるPEST分析を用いて考えてみます。

<大震災によるによるPEST分析>

●一時的なトレンド
大震災の直後というのは様々な、中には不確かな情報が飛び交うことにより、人々は不安に陥ります。そこで食料や水、電池やガソリンといった主な生活消費財の買い占めが起こります。これが一時的な消費者心理という「社会的要因」の変化です。やがてインフラが元どおりになり物資の供給が安定してきたと分かると買い占めは無くなるものです。

●中長期的なトレンド
大震災が起こったことで、強く耐震性や災害への対策の需要が高まるといった「社会的要因」の変化、他には急遽代替えエネルギーの研究開発といった「技術的要因」の変化といったことが起こると考えられます。

PEST分析まとめ

PEST分析は、マクロ環境の分析で、最も有効なビジネスフレームワークです。
どちらかというと長期的なトレンドを考えていくものであり、常に分析が必要かというとそういうものではありません。新規事業を立ち上げる時、新製品や新しいサービスをリリースするとなった時、自社の存在する業界で大きな変化が起こった時など、使うのに適したタイミングを見計らって分析をすることで、マクロ環境に取り残されずにチャンスをつかみ取ることができるのです。

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